【運用レポート】山形県立山形聾学校(宇治川雄大先生)
教育機関向けプランをご利用いただいている山形県立山形聾学校の宇治川先生からちょっと画期的なアプローチのUDトークの使い方をいただきました。
「指導者の授業改善の視点」とありますが、これは別にろう学校に限らず学校一般や塾や企業の研修などにでも適応できると思います。教員や講師が「振り返り」をすることで質のレベルアップが見込めます。
この件でお問い合わせがある場合は山形県立山形聾学校の宇治川までご連絡いただければご対応いただけるとのことです。
(写真が宇治川先生、優しくて熱い先生です!)
ぜひこれからもご活用ください!
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授業改善を目的とした音声認識の活用について
山形県立山形聾学校
教諭 宇治川雄大
1.実践にあたり
本校では、平成28年度より、集団補聴システムと音声認識を活用した実践に取り組んでいます。実践の主な目的は、本校に在籍する聴覚に障がいのある幼児児童生徒が主体的にコミュニケーションを図る手段としての有効性を確かめることであり、実践を通して効果があることが分かりました。また、校外学習を中心とした教育活動での活用に加え、生徒が参加する研修会での情報保障としての活用、聴覚に障がいのある教職員に対しての情報保障としての活用、公開研究会や会議での議事録作成等の場面でも効果が実証され、現在も幅広く活用しています。
今回は、音声認識を用いた新しい実践の提案として、指導者の授業改善の視点で、音声認識を活用することを試みました。具体的には、指導者の授業での発問や指示を音声認識アプリケーションにより文字情報へ変換していきます。そして、授業後に文字情報をもとに指導者の発問や指示の内容を振り返るとともに、児童の実態に合わせた発話や指示を統一して使用していくことで、児童の学習理解を高めることに繋がるか検討しました。なお、本校では、Shamrock Records株式会社の提供する「UDトーク」を、法人向けプラン(教育機関向けプラン)の契約を結んだ上で使用しています。
2.実践の紹介
今回の実践は、小学1年生の算数科「なんじ、なんじはん」の単元で検討を行いました。以下に、実践の結果について紹介します。
単元を始めるにあたり、指導者の発言について、長針を「ながいはり」、短針を「みじかいはり」等と言い方(板書や学習プリントも含む)を統一したり、発問を「長い(短い)針はいくつですか。」「何時(何時半)ですか。」等の言いまわしで統一したりしました。しかし、実際の授業では、「(長い針は)いくつのところですか?」と計画と異なる言い方で発問してしまったため、児童が混乱し、指導者が答えを児童に伝えるような状況になりました。授業を行っている際は、指導者は児童が発問の意味を捉えられないと判断して進めましたが、データを確かめたことで、指導者が統一した発問の言いまわしと異なる言いまわしをしてしまったために、児童が発問の意味を捉えきれず答えられない状況が生じたことが明らかになりました。
そこで、次時からは、特に発問においては、統一した言いまわしを徹底することを意識したことで、児童は発問の言いまわしに慣れることができました。その結果、単元の後半になると、児童は長針や短針の位置についての発問に対して数字を答えることができるようになり、授業の中心課題に時間を十分にかけて学習し、目標の達成に繋げることができました。
このように、ビデオカメラ等の機材を準備して記録したり、複数の教員で発言や指示の内容を記録したりすることなく、指導者が容易に自らの授業の振り返りが可能であることが、今回の実践から示唆されました。