【トピック】今だから考える「UDトークのユーザーは誰か?」
UDトークは「話し手が使うアプリです」といつも紹介をしています。これは開発者自身が初めて聴覚障害がある方と出会った時に「話を伝える手段が足りないのは話し手である自分の方だ」と感じて話し手である自分をサポートするための手段として開発をしたことが理由です。このコンセプトはいまでも変わっておりません。
少し専門的な言葉を使うと障害の「医学モデル」と「社会モデル」と言うものがあります。「医学モデル」は身体的な障害があることによって課題がありそれを補っていくと言うものです。「社会モデル」は障害があることによって課題が発生するのはその社会自体が未成熟であると言う考え方です(※ざっくりと僕の捉え方です)。
UDトークは「社会モデル」的な考え方で開発をされています。例えば聴覚障害がある方の周りの方たちが全員UDトークを使って話すようになったり、当たり前のようにイベントや動画に字幕がつくようになれば聴覚障害がある方が生活で困ることはほんどなくなるでしょう。こういう状態がUDトークが目指す「社会モデル」での解決なのです。
UDトークには「話して使う」機能がたくさん実装されています。話して相手に文字で伝えるのはもちろん、会議の議事録や字幕を作成したり、最近ではキーボードとしていろんなところに入力ができる機能もあります。これが聴覚障害がある方が考える「医学モデル」つまり自立支援的なアプリとして見られると「なんで話して使う機能がこんなに?使わないのに」と思われることもあるようです。
もちろんUDトークも手に持ってて周りの声が文字になると言う使い方もできます。これも最近実装した「遠くの声」に切り替える機能で2〜3m離れたところの声がとてもよく拾えるようになったと好評です。でもやはりUDトークのコンセプトは「話し手が伝えるために使う」と言うものです。
でも正直、聴覚障害がある方とのコミュニケーションだけで使うとなるとそんなに多くの機会もなく、話して使うことに慣れていきません。そこでUDトークは翻訳機能を実装して多言語会話アプリとしても使えるようにしたり、最先端のテクノロジーである音声認識技術をビジネスで活用できるように様々な「話して使う」便利な機能を実装しています。実は開発者自身もコミュニケーションで使うことは稀です。ですが文字起こしや字幕作成やテキスト入力などUDトーク(と言うか音声認識技術)を使わない日はありません。そうやって普段から音声認識を使って声を文字にすることに慣れておくことでいざコミュニケーションで使う時になったら同じようにすぐ使えるようになります。一人でも多くの方がそう言う状態になることが聴覚障害者を取り巻く課題を「社会モデル」として解決していくことになります。
UDトークは今でも毎日数百から数千のダウンロード数があります。10年かけて100万ダウンロードは超えており、ビジネスストアや教育関係のキッティングを含めると300万ダウンロードを超えています。言い換えるとそれだけの人にUDトークを知っていただけて、開発者自身が感じた「話し手側の課題」解決に結びついた人もいるかもしれません。このダウンロード数は聴覚障害に関わる分野の人たちだけではなし得ない数だと思います。そして多くの人たちがUDトークに話していろんな用途に使っていることを証明しているとも言えます。
聴覚障害を「医学モデル」で課題解決のアプローチをする自立支援的なアプリはいろいろ出てきました。むしろいろいろ調べて使ってみて自分に合ったものを使っていただければいいと思います。UDトークよりも適したものはもちろんあるでしょう。ですが「社会モデル」でアプローチした場合、UDトークはどのアプリと比べても使いやすい自負があります。それは開発者自身が「話し手として使う」ことに特化し便利に使いやすくしてきたのと、いまでも実務や実生活で毎日使っているからです。
「社会モデル」的な課題解決へのアプローチで話し手が使うというところでUDトークはこれからも開発をしていきます。じゃ「医学モデル」的な聴覚障害がある方が自分のために使うのは違うの?と言うことではありません。UDトークを相手に勧めて「これに向かって話してください」と言うことは実は「社会モデル」的なアプローチなのですから。